戦略キャンプ―2泊3日で最強の戦略と実行チームをつくる/森田元, 田中宏明, 佐藤俊行, 松山雅樹

戦略キャンプ―2泊3日で最強の戦略と実行チームをつくる

戦略キャンプ―2泊3日で最強の戦略と実行チームをつくる

会社の基本戦略が実行不全に陥るのは、決定後の環境の変化よりも、決定時点ですでに問題を内包していることに起因していることが多い。つまり、意思決定時に関係者が本音で話しておらず、そのために戦略実行へのコミットメントが得られないことがある。
実際、変革を認識していても、それを達成できたトップは少ない。スピード勝負の環境下で拙速でもいいからできることから着手するなかで、実は重要で根本的な問題ほど手がつけられず放置されている。解決に時間と労力を必要とする複雑な問題や合意形成が困難な問題、たとえば、組織内の軋轢をもたらす問題などは意識的・無意識的に放置されている。
そこで登場するのが「戦略キャンプ」である。キーパーソンが一同に介して(最低2泊3日の)泊まりこみ合宿を行い、重要課題を議論する。本著はこれを創造的変革手法として提案している。
本のなかで、ケーススタディを紹介しながら詳細にポイントを説明してくれている。これがじっくり読めば読むほど面白い。主張がちがう社員たちが一つの結論に行き着くまでに、プライドや立場が邪魔をしたり、反対に結論への踏ん切りになったりする。たとえば、他メンバーが「火中の栗を拾う覚悟」で身をきってのぞんでいるのに、あまりに頑固に自分の意見に固執することは、あまりに非常識的である。すると、自然と(苦渋しつつも)腹が決まる。だんだんとキャンプで結果を残すという目標にむかって、メンバーが立場を超えて議論をする、そんな様子が垣間見れます(ケースだけど)。
決定のプロセスに最初から最後まで全員が同席する、というのは普段は起こりえない状況。これを無理やりに短期間作ってしまい、考え抜いた議論進行(ファシリテーション)や議論をリアルタイムで記録する議事録などツールも準備…。いきなり素人がやると、現時点の共有や主義主張の言い合いで終わってしまう気もして怖いですが、この本をよむとケースのなかでキャンプへの心持ちとか気合いとかが伝わってきて、イメージがつきます(そう、ケースで書いてくれたらか伝わってくる気がしました)。素人キャンパー的には、まずはこの本をメンバー全員への必読書にして、キャンプをしてもらうのがいいかなと思いました。博報堂キャンプ本が比較的ハウツー的であるのに対し、こちらのほうがさらにわかりやすく、本質的なことを書いてくれているように感じました。