東京物語/小津安二郎

妻が里帰り出産のために不在で、一人の時間が続いている。
ぼくの住処は、そこそこ広いロフト付きの天井の高い部屋で、居心地はいい。ただ見知らぬ土地にもう5年もいて、ふと帰り道に自転車を漕いでいると、なぜここにいるのかが分からなくなる時もある。会社以外で誰とも顔を合わせないと、そんな心細い気持ちになる。
そんな折、amazon primeの無料特典でひさびさに『東京物語』を鑑賞した。

家族というのは、当たり前のようにあって、家族らしくあることがけっこう難しいものだ。映画の中では、香川京子さん演じる京子が、他の家族の振る舞いを批判する。と同時に、それは若いからだ、だんだんとそうなってくるのだ、ともいう。そのようなものかもしれない。実際、最も家族らしい振る舞いをする原節子さんも、実は最も他人であり、「私はズルい」と夫の存在が消えかかっていることを告白している。
今の自分は、どうだろう。妻、両親、義理の両親、親戚…と思い浮かべて、幸せだなぁと思う。今の家族のあり方がこの先ずっと続くわけもない。それが世の摂理であることは映画を見ても分かることだが、そうであるからこそ、幸せと思える今があるだけで、たとえ朽ちても幸せな家族と言える気がする。