ラットマン/道尾秀介

ラットマン (光文社文庫)

ラットマン (光文社文庫)

先輩からおすすめされた推理小説
ラットマンとは「有名な多義図形で、見方によって人の顔に見えたりネズミに見えたりするもの」だそうです。文脈によって人間は色々な錯覚を起こしてしまうという例のようです。

(http://www.nazotoki.com/step1.html)
この本、タイトルどおり読者は真相とはちがった解決を想像しながら読み進めてしまいます。わざわざ「ラットマン」の説明がされているので、警戒しながら読むのだけども、ラストには気持よくだまされてしまいます。なるほど、とひざを打つ感じ。さらに後半は、父子それぞれの物語が重ねて描かれていて、ズレを含んだ繰り返しの構造が徐々に重なっていくのを楽しめます。
あとがきにも書かれていますが、ただの計算だけの推理小説ではないです。解決をたのしむだけのものではなく、物語として楽しめます。
「殺意だけでは人殺しになれない。殺意と殺人のあいだには、いくつもの偶然が介在している」「一生懸命に真似をすれば、その人の本当のやりかたったことがわかる」などの言葉が印象に残りました。あと、桂が脱いでいくときに「子供のような体臭が、鼻先でどんどん強くなっていく」という描写もリアルで良。