コミュニティデザイン―人がつながるしくみをつくる/山崎亮

コミュニティデザイン―人がつながるしくみをつくる

コミュニティデザイン―人がつながるしくみをつくる

まちづくり本や建築本はいろいろ読みましたが、この本は格別です。それは、たった1ページめくっただけで分かるんです。冒頭の写真。ふつうのおばちゃんが室内で集まって何か話に真剣に耳を傾けている写真。「そう、これだ」と思ってしまいます。ふつうの地域の人が本気で乗り出して活動している、この熱っぽさ。こういう写真はなかなか撮れない。しびれました。「地域の自発性が…」「住民が行政と一丸になって…」という文字面をみることは多いですが、ほんとうにこれに真剣になって取り組み、しかもしっかり実行している人は少ないと思います。
内容は各地の事例がいくつも紹介されています。たとえば、こどもと一緒にワークショップ形式でデザインした公園「あそびの王国」。ここはこどもたちが実際に遊んだ記録をもとに公園のデザインを考えています。さらにオープン後のマネジメントのために、公園を設計している段階から近隣の大学生などに呼びかけ、プレイリーダーとして子供たちと一緒に遊ばせています。つまり、ハードとソフトを同時にデザインするかたちです。数年後かつてプレイリーダーと一緒に遊んだ子供たちから、次世代のプレイリーダーが輩出されるという循環。この巻き込みが、とてもうまい。
また家島では、5年間のプロジェクトを通して地域の住民のなかから自発的にまちづくりを行う組織(積極的な住民やNPOなど)を育てています。5年間のあいだ地域に密に関わってコミュニティを自立化させ、5年後には地域からいなくなるという流れ。そのために「ゆっくりであること」が大切だといいます。これは何気にすごい。ふだん「ビジネスはスピード」と骨の髄まで教えこまれている企業人にとっては、残念ながら、そのやり方が絶対のように思えてしまいます。ビジネスのスピード感が染みこんでしまっているところがあります。だけど、それはちがう。この指摘は大事だと思います。ほんとうに住民たちの自主性をつくるためには、そんなスピードでは誰もついてこない。実際にまちづくりに企業が顔をだしてもどこか空を切って終わるのは、かなり根本的な問題としてスピートがあると思います。なかなかふつうの企業ではできない仕事です。
どの事例もたいへん興味深いです。とても面白く書いてありますが、ほんとうはその百倍以上たいへんな試みだったにちがいありません。
「つくるのをやめると、人が見えてきた」。建築ではなく、ソフトのデザイン。言ってみれば、気持ちのデザインです。教育に近いのかもしれません。そして、時間をかけてゆっくりと問題を解いていく山崎さん。その貫くスタンス。むちゃくちゃかっこいいです。コミュニケーション能力が高くないと絶対にできません。ぼくは山崎さんと面識はありませんが、彼のひとを受け入れる度量を感じます。
山崎さんは今週の情熱大陸でも取り上げられるそうです。見逃せません!