ぶらんこ乗り/いしいしんじ

ぶらんこ乗り (新潮文庫)

ぶらんこ乗り (新潮文庫)

会社の先輩がおすすめしていた小説(を勝手に拾い読み)。これはおもしろい!
姉と弟の数年間を、天才肌の弟がつづる物語とともに回想するストーリー。兄弟に起こる不幸や気づきがひとつひとつ少年の作る物語として落とし込んであります。その物語が、ほんとうに少年が書いたかのようなみずみずしさにあふれていて、おどろきます。
題名の「ぶらんこ乗り」は、少年が書いた空中ぶらんこの話から。ふたりの空中ぶらんこ乗りはずっとぶらんこの上で暮らしていて、ずっとゆれている運命。「わたしたちはずっと手をにぎっていることはできませんのね」「ぶらんこのりだからな」でもぶらんこを揺らして、いのちがけで手をのばすと、ふたりはすこしの間だけ手をにぎることができる。サーカスで空中ぶらんこをみた弟が書いた話なのだけど、彼自身もどんどんぶらんこが好きになって学校でいちばんのぶらんこ乗りになる。このストーリー自体も、そんなぶらんこがゆれているような、ゆったりとしてちょっと切ないかんじです。