「時代を読む」こと。

先日ご紹介した「R25のつくりかた」で、実は紹介していなかった印象的な話があります。
当時『ダ・ヴィンチ』や『ゼクシィ』の編集を担当していた藤井さんがあたらしく担当する『R25』の記事を考えるにあたって、かなり苦労したそうです。『ダ・ヴィンチ』や『ゼクシィ』は「本」や「結婚」といった雑誌として明確なテーマがあります。対称的に『R25』は特定の内容は持っておらず、ターゲットも幅広くM1層としています。雑誌を手にするさいに、明確な期待がない「無目的な若者」を相手にすることになります。彼らを惹き付ける内容とは…記事とは…。藤井さんは悩んだそうです。「無から何かをつかむ」「時代の空気感から何かをつかむ」へのチャレンジです。結果『R25』は「時代の空気」を十分考慮して設計を試みています(詳しいところは著書をご覧ください)。
この「時代の空気をつかむ」は、獏としていて考えるのすら困難です。「どういうこと?」と、一見わけがわからないように感じます。なんとなくですが、とくにデザインを学んだことがある方ほど、「時代の空気」というアプローチに「なんだか軟弱なんじゃない?」と不快を示す気がしています。もっと確実に人々を動かす仕組みはないのか…それだけで人々は動くのか…と疑問に思うのではないでしょうか。
でも「時代の空気」というのは、どうやら存在します。少なく見積もっても「いま言われるとなんだか気持ちいいなぁ…」はありますよね。そうじゃなきゃ、あの「R25」のしっくりハマった感じは説明しにくい。「時代の空気」にはパワーがある。ぼくはこの「時代感」という面白みにだんだん気がつきました。(うむ、説明しにくいぞ…)
たとえば、とくに消費者の関与が低いカテゴリにおいて、これは有効な要素です。本当はどの商品でもいい…という消費者の感覚のなかで、「それ」を選んでいただくには、ふと共感できるメッセージが必要です。「ズバリ、それ」は難しくとも、「なんだか、それ」ぐらいはサポートできる力を「時代感」に感じています。
「時代を読む」なんて、なんだか当たり前のことを書いてしまったかもしれません。どうなんでしょう、急に言われてもピンとこないのではないでしょうか。ぼく自身、かなり空気読めてないですしね。。でも少しずつ考えるヒントを見つけていけたらいいなとおもいます。