ヨルグ・フォラートとの再会


karaokekalkという小さなレーベルが一世風靡したのは、もはや10年前の1998年のことだ。wunder(ウンダー)ことヨルグ・フォラートが出した一枚の画期的なアルバムが、MorrMusicの台頭などフォークトロニカとよばれる一連のブームを巻き起こしていく。まだ無名だった高木正勝が初期のkaraokekalkからリリースしたことは、同じ日本人としてどこか誇り高かった。それくらい、karaokekalkというレーベルの衝撃は強かったし、無二感に満ちていた。(いまでは当たり前になってしまった)アナログな音をサンプリングして叙情的・牧歌的に仕上げた耳あたりのやさしいエレクトロニカは、それまでWarpやいまは亡きミルプラトーに代表されるデジタル音の追求という方向をあらためさせ(90年代後半、エレクトロニカは明らかにテクノロジーの進化とともにあった。ぼくのような一般的なリスナーですら、コンピュータの進化と表現の変化を耳で感じることができた)、大きくその表現の幅を拡げたように思えた。
もっと細かいことも言える。たとえばwunderがサンプリングしたビリー・ホリデーの歌声は、その後色々なアーティストが使用してちょっとしたブームになった。コーネリアスが自作「Point」でまったくおなじ「Brazil」を使ったことは、wunderへのリスペクトを露わにしていた。
…まぁそんなことはとりあえずは横に置いて。今宵のテーマは、偶然にも見つけたヨルグ・フォラートのウェブページ(2000年前後からwechsel garland名義で活動している)だ。ここで彼の最新の仕事を聴くことができる。それがどうにも懐かしく、また丁寧な仕事なのである。そして、彼が健気にも同じ音楽を作り続けていたことに、じんわりと感動を味わった。彼は変わらないのである。
>>wechsel garland
http://www.wechsel-garland.com/listen_here.html
視聴できる曲リストのいちばん上をクリックすれば、プレイリストのように全曲が続けて再生される仕組みになっている。もしこの記事を読んだら、BGMとして彼の音楽をゆっくり聴いてみながら今夜は作業をしてほしい。ぼくが深く薦めるまでもなく、購入の意思をもつことになる…と思う。兎にも角にもこのぼくとヨルグ・フォラートとの偶然の再会は、ここ数年の自分のプレイリストを見直すきっかけになった。

Easy

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Wunder

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