『日本よ、「京都議定書」を脱退せよ』(武田邦彦さん)

先日のこと、文藝春秋を読んでいたら、『日本よ、「京都議定書」を脱退せよ』(武田邦彦さん)というコラムを目にしました。この内容が面白かったので、紹介します(いま手元にないので、以下はだいぶ省略/要約/誤謬をふくんだかたちになります。興味をもちましたら、ぜひ原文をおあたりになることをおすすめします)

氏によると、日本のGDPが世界に占める割合が昨年末に大幅に減少したのは、京都議定書の影響が考えられるといいます。名目上は世界が協力して環境問題に立ち向かうはずだった京都議定書は、一部の思惑、つまり欧米諸国によりアジアの経済成長を抑えるという条約としての側面を帯びてしまうことになりました。当時の京都会議に一員として参加した佐和氏(立命館大学)によると「議長国日本は、終始一貫、蚊帳の外に置かれっぱなしだった」と議会の様子を振り返っています。

ですが、この先進国の新興国発展途上国の経済的な発展をおさえるという目論みは、ご存知のとおり新興国・途上国から、なぜ自分たちの発展を制約されねばならないのかと猛反対を浴び、けっきょく先進国のみがその制限を受け入れることになりました。このことは議会を牛耳っていた先進国陣営にとっての痛手でしたが、周到にその準備を行っていた国々がありました。それは、EUです。
京都議定書があずけた排出量の削減値の基準とは、実は1990年時点でのデータを基に削減率を決めており、それがEUにとって決定的に有利な条件でした。たとえば、ドイツの1990年といえば、東西ドイツが統一されて間もないころで、省エネの対策がほとんどなされていませんでした。これにより排出量の削減は容易であっただけではなく、そもそも議定書に署名をした1997年の時点で、その目標削減値をクリアしており、むしろ議定書が排出量の増加枠を確保させることになりました。これはイギリスも同じです。この1990年というトリックは、実にほとんど知られていません。
この1990年という基準を頭にいれて考えると、実際の削減義務を負ったのは参加国中でアメリカ、カナダ、日本の三国のみであることが明らかになります。そのうち、アメリカは京都議定書の批准を拒否、カナダは2000年に離脱したので、実はそれを今でも健気に守っているのは日本のみなのです。

そしてその日本は自国だけで削減義務を果たすことができないので、他国の削減に投資することでその責任を果たそうとしています。いわゆる「排出権取引」です。この取引では日本は足元を見られて、完全にカモにされていることが指摘されています。
こうようにみていくと、ぼくたちがナイーブに語りがちな環境問題は、明らかに国同士のパワーゲームであることが見えてきます。日本がその戦いに敗れている…というわけです。

また、そもそも温暖化は温室効果ガスの影響であることに疑問も寄せられてもいます。昨今の研究では、温室効果ガスによる温暖化説は否定される傾向にあり、温暖化は太陽の周期的な活発化によるもので、今後は寒冷化に向かう傾向を指摘されています*1。温暖化でもっとも早く水没する国とされるツバルの実際は、海水面の上昇ではなく、地盤沈下によって浸水がもたらされている、隠された事実もあります。

さらに本文によると、「地球温暖化について国をあげて騒いでいるのは、世界中で日本くらいだという現実」が指摘されています。海外でのトップニュース(CNNやBBCなど)においての主な関心は、国際紛争や経済問題であり、環境問題については熱心な環境団体の紹介程度に留まっているといいます(まぁこれはどの程度かは、極めてはかりにくい内容ですが)。
本文の末尾になると、議論はマスメディアの体勢の批判になります。そこでは日本のマスメディアが環境問題について、「偽装報道」とも言うべき、報道をしていることを指摘しています。たとえば、ダイオキシンは人体にほとんど影響がないことが明らかになっているにもかかわらず、それを猛毒のように報じています。報道では、ベトナム戦争で撒かれた枯れ葉剤のなかにダイオキシンが含まれていたことを取り上げ、人体への影響がうたっていますが、実際のところ日本ではベトナム戦争以降にもその8倍のダイオキシン濃度を含む農薬が使われていたこともあります。周知のとおり、それにより日本には、ベトナムのように奇形児は誕生してきていません*2

以上、ご紹介してきた内容によると、環境問題はきわめて政治的なゲームによって支配され、それを包み隠すかのように、マスメディアが偽装的な報道をしている姿が見えてきます。それは視聴者へのある種の明確さを求める、短絡的な解決です。ぼくらはこれらの真相について何ら知ることはできませんが、どうなのでしょう。専門家の方がマスコミのやり方を否定するのは常套だとして、ツバルの水没が虚偽であること(可能性)などは、ぼくは興味をひかれました。
環境問題が政治的な舞台で動いていること、また歪んだ事実がまかり通っていることは、なにも筆者の武田さんのみが知っていることではなく、きっと多くの専門家たちにとって周知のことなのでしょうね。そこに環境問題に関しての政治的な深い闇がある…という事実もありますが、まずはマスコミの正しい報道がそもそも欠けていることだけが、ひたすらに視聴者の知識や想像力を制限しているのではないか…そんな専門家の怒りが噴出した文章のように感じられました。

*1:ここは原文に載っていない部分です

*2:ダイオキシンの人体への影響の有無については、異論もあります。wikipediaなんかを見ると、その様子が分かります。http://ja.wikipedia.org/wiki/ダイオキシン