バベル

年末にテレビで放送していたのを今頃見ました。おおまかな感想としては、ユリイカみたいな映画を撮りたかったのかなぁという感想。
「バベル」というタイトルが示すとおり、言葉やCOMの不十分さで起こる不幸(そこからの再生)を描いています。ちょっとしたCOM(相手への想像力)が不足しているために問題が起こることは日常でもおおくあります。映画中でいうと、少年がバスを標的に銃を放ったとき、バスはあくまでも動く標的であって、そこにリアルな人間が乗っていることを少年は想像できませんでした。後半の家政婦の「私は悪い人じゃないの。ただ間違ったことをしただけ」というセリフはこの映画の主題をシンプルに表していると思います。日常に起こりうるほとんどの不幸は、ちょっとしたCOMの不具合から起こっているのかもしれません。
またぼくはCOMの不完全さという話にあわせて、「無意味な暴力」というテーマについても考えさせられました。モロッコの少年が放った弾丸は、アメリカ人女性にとって全く意味が分からない突然の暴力です。またその夫(ブラッド・ピット)も、彼女の看病中に観光客と言い合いのすえバスに去られるという一方的な拒絶にあい激怒してしまいます。日本の菊池凛子が演じる女性は、生まれつきに耳が聴こえないという、言ってみればこれも全く無意味な暴力を天から受けています。結婚式の帰り道に置き去りになってしまう家政婦(と子供たち)も、見方によっては完全な被害者です。彼らは自分なりの日常を生きているはずですが、それでも突然の暴力に見舞われてしまいます。実はぼくたちは忘れがちですが、いつもどおり道端を歩いていても、突然反対側から歩いて来る男に石で頭を殴られることも、ほんとうは起こりうるはずのことなのです。これもCOMの不完全さのせいで、一方的にもたらされることだと思います。ぼくはこちらの恐怖から「バベル」というテーマを感じました。
ちょっとググって他のひとの感想見ましたが、みなさん色々なこと言ってますね。…まぁ見なくていいとも思います。