「R25」のつくりかた / 藤井大輔

創刊したとき、かなりインパクトがあった「R25」。はじめて手にとったとき、コンテンツの充実っぷりとデザインの親しみやすさ、そしてそれが無料であることに、無二感を感じました。
そんな「R25」の創刊エピソードを紹介しているのが本著。

「R25」のつくりかた (日経プレミアシリーズ)

「R25」のつくりかた (日経プレミアシリーズ)

リクルート本としては『創刊男』がかなり面白いですが、やや散らかっている印象がありました。これはもっとシンプルに読みやすく、でもDNAはそのままに…といった感じです。
とくにグループインタビューを通した若者のインサイト発見のくだりがこの本の要所です。この部分、若者世代について調べているマーケッターの方が読んでも参考になるのではないでしょうか。
新聞を読んでいるなどステータスを大事にすることは、世代的な特徴として割と他の著書でも述べられているところかと思います。が、ネット文化がマキシマイザーを増やした結果、若者たちが自分の答えに自信を持てなくなっており「気に入った商品を人前で言えない」「実は真剣じゃなかった」という態度を生み出している…という考察はかなりクリアで良いです。
また表現アプローチとして、「R25」は「上から目線を表に出さない工夫」をしていると言います。たしかに言われてみれば、「R25」はぼくらに近いところから発言している気がします。人に例えるなら「頭のいいやつ」というより「なんだかいいやつ」といった感覚です。この言い方の問題は、ふだん仕事をしていても感覚的なゆえに議論を呼ぶことが多い部分です。重要であるのにもかかわらず、なかなか問われると(情けないことに)ぱっと理由を言葉にしにくい。でも著書ではターゲット心理からこの部分を分かりやすく述べられています。例えば、M1世代が読みたいのは同世代の成功者のインタビューではなく、1つ上の年代の成功者たちのもので、「若いうちは俺もまだまだだった」「大丈夫だ」という話を聞きたいというのは、なるほどと思いました。
そのほかメディア・インサイトの掘り下げも明解です。電車のなかで読む…ということから内容を詰めていく部分。メディア・インサイトとか言ってもモノには落ちにくいよね…なんて言ってられませんね。「R25」はかなり計算されて作っています。たとえばグラビアアイドルの写真を表紙に使わないのは、M1世代が読んでいる姿を人に見られても恥ずかしくないようにしているからだそうです。
30~40分程度で勢いそのままに読めてしまう内容です。こういう良著が「R25」のメディアとしての価値をさらに高めていくのでしょうね。おすすめです。